2019/06/26 03:46
目が覚めたら深い海の底。そこにあるのは闇のみ。自分の存在すらも疑わしくなるその場所で、旋回をしている。そして旋回しながら徐々に浮上していく。少しずつ、少しずつ。時々下がってしまうけど、それまでの軌跡と混ざり合い、新たな螺旋を創り上げる。それが人生なのかもしれない。
東京を中心に活動するロックバンド、shannonsの1stフルアルバム「クロールで旋回しながら」。このアルバムを聴くと上述したようなイメージを印象付けられます。
何周も旋回していくように、何周聴いても飽きません。それどころか聴けば聴くほどこのアルバムの深さに気付かされます。毎回好きな曲が変わって、最終的には全部好きになります。いや、1週目から最高だったか。まぁ曲が生まれ変わる瞬間を見られるって感じですかね。
そもそも1曲1曲の完成度がメッチャ高いのですが、それに加えてコンセプトアルバムとしても非常に深い作品なので、どこを切り取っても「素晴らしい」としか言いようがないです。
深い海の底を連想させるような神秘的なトラック「D#」から始まるのですが、リピートして聴くと最後の曲が終わった後にまたここから始まります。
「あぁ、結構泳いだけどまだ深海だな」っていう感じです。ゴールなんて無いんですよ。ひたすら光を目指す。生きている以上それは必須。止まるときは死ぬとき。
そんな途方もない旅の途中には様々な物語があります。1曲目の「D#」を除けば11個の物語。
本当にどれも好きで1曲につき居酒屋1件くらいのペースで語りたいものですが、とりあえず注目すべきはリードトラックでもある2曲目の「深海」です。
どの曲にも言えることなのですが、表現力が半端じゃないです。ホントに海の中にいるような心地にさせられます。それに圧倒的センスのメロディラインと心に直接語りかけてくる声とが絡まります。正直この曲でドラマのタイアップでもやろうもんなら一瞬で売れると思います。
あとは6曲目の「君に会えたら」。曲はさることながら歌詞が非常に好きです。「なげやりは君を傷付けた うまく刺さって抜けないといいな こんなにも勝手な僕を 捨てきれないでいるよ」から始まるのですが、メッチャ良くないですか?曲を聴きながらだと良さは倍増なので曲を是非聴いてみてください。だって「歌詞」だから。
2曲ご紹介させていただきましたが、ホントに素晴らしいアルバムです。この言い方あまり好きではありませんが「捨て曲無し」です。
発売してからしばらく経ちますが、僕はいまだにこのアルバムに溺れ続けています。皆さんも僕と一緒に溺れていきましょう。
そう、「クロールで旋回しながら」。
【このレビューを書いた人】
「日本のロックを聴け」というブログを運営しています。自分なりの言葉で記事にロックと愛を詰め込んでいます。脱サラ志望のサラリーマン。ラーメンのスープで溺れ死ぬのが理想の死に方。