2019/08/18 17:46

   

休日。ここ数週間、休み返上で仕事に明け暮れていたがようやく目処が立った。洗濯機を回す。窓を少し開ける。カーテンが揺れる。CDの再生ボタンを押す。1回目の洗濯物を干しているとき、流れるメロディーに思わず手が止まった。


古い。Amsterdamnedの音楽が映し出す風景描写は、四半世紀ぐらい古い。手が止まったのも、「平成初期のコカ・コーラのCMかよ」ってツッコミを入れたせいだ。


でも、その古さがあまりに眩しくて、聞き手は胸が締めつけられる。M-1「Kaleido」が聴かせるハイファイな音は、視界全体がハレーションを起こしたようなバブル崩壊前の眩しい音だ。しかし当然、私たちはもうあの頃の世界を取り戻すことはできない。私たちがハイファイな音の先に蜃気楼を見る頃、曲の中では主人公が失った「君」の残像をベッドのシルエットに重ねている。繰り返す、「私たちはもうあの頃の世界を取り戻すことはできない」。


Amsterdamnedはノスタルジーの名手だ。音に酔ったふりでもしないとやり過ごせないような、エグいほどの切なさをステージに持ち込んでくる。重厚なベースラインからの昇華が心地良い「Marychain」、気だるくラグジュアリーな「Tangerine Dream」、ダブに思わず身体が揺れる「エクスマキナ」、そして疾走感溢れるタイトル曲「メメント」でも、彼らの世界観は確かに再現されている。


気がつくと洗濯機は2回転目を終えていた。洗濯物から漂うシャボンの匂いをかぎながら、四半世紀前の夏休みにそうしていたように、コップ1杯の麦茶を飲んで昼寝をした。




【このレビューを書いた人】

初めて買ったレコードは「ガラスの十代」。光GENJIをまねて靴下で廊下を滑っていたのも良い思い出です。バンド「死んじゃうじゃんか」の庶務をするうかれた三十代。川が好き。

 

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